DXとは?デジタル化と何が違うのか

先日、クラウド会計の画面で銀行の明細が勝手に取り込まれていくのを眺めながら、ふと考えました。これはDXなのか、それともただのデジタル化なのか。

グレープフルーツ編集部です。弊社はWeb制作と印刷物の会社で、自社サイトを含めて複数のサイトを管理しています。「DX」という言葉は打ち合わせでも資料でも毎週のように目にしますが、意味を聞かれると案外、言葉に詰まりますよね。

先に答えると、DXは「デジタルの道具を入れること」ではなく、「道具があることを前提に、仕事や事業のやり方を変えること」です。

DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、「Trans」を「X」と書く英語の慣習からこの綴りになっています。

目次

DXとデジタル化はどこが違うのか

紙の書類の山からPDF化、仕事の流れの接続、店舗や商品の変化へと4段階で進むアイソメトリックの図

紙の請求書をスキャンしてPDFにする。これはデジタル化です。

では、請求書を出してから入金を確かめるまでの流れを、人が触らなくても回るように組み直したら、どうでしょうか。

国の資料では、だいたい3つの段階に分けて説明されています。

段階何をするか身近な例
デジタイゼーション紙や口頭の情報をデータにする請求書をPDFにする
デジタライゼーション仕事の流れをデジタル前提で組み直す入金を自動で突き合わせる
DX事業や組織のあり方そのものを変えるデータを見て、売り方や商売の形を変える

冒頭のクラウド会計の話で言うと、明細が自動で入ってくるのは2段階目のデジタライゼーションです。記帳は楽になりましたが、事業の形は何も変わっていません。

つまり、弊社もまだ2段階目です。

中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が2025年12月に1,000社から回答を得た調査で、DXに「既に取り組んでいる」と答えたのは18.9%でした。その189社に進み具合を聞くと、「デジタライゼーション」が32.8%、「デジタイゼーション」が32.3%。ビジネス変革に当たる「DX」の段階は27.0%、紙ベース中心は7.9%で、取り組んでいる会社の中でも1段階目か2段階目で足踏みしているのが3社に2社という分布です。

デジタル化が悪い、という話ではなく、順番の話です。

私の経験では、段階を飛ばしてDXはできません。

PDF化や自動取り込みは必要な通過点ですし、それだけでも仕事はかなり楽になります。ただ「DXに取り組んでいます」と言うとき、自分が今どの段階にいるのかを分かっているかどうかで、次の一手がまるで変わるかと思います。

国の定義をかみ砕くとこうなる

経済産業省には「DX認定制度」という、DXに取り組む土台が整っている会社を国が認定する制度があります。認定の基準になっているのは「デジタルガバナンス・コード」という指針で、現行は2024年9月に改訂された3.0です。

指針の文章はかなり硬いです。

私なりにかみ砕くと、経営する側が自分の言葉で「デジタルを前提に、自社の事業はこう変わる」と説明でき、それを実行する体制と、進み具合を測る物差しを持っている状態です。それが国の言うDXの土台で、ITシステムの整備も項目にはありますが、主役は経営の話です。

認定を受ける会社は増えています。

経産省の制度ページには、直近1年で認定事業者が約1.4倍、中小企業等では約1.6倍になったとあります(2026年9月時点の記述)。認定事業者へのアンケートでは、約70%が効果があったと答えていました。

認定を取ること自体が目的になっては本末転倒ですが、「国は何を見てDXと呼んでいるのか」を知るには、この制度の基準を眺めるのが一番の近道ではないでしょうか。少なくとも「最新のツールを入れたか」は、どこにも書かれていません。

取り組む会社は本当に増えたのか

IPAが2026年7月に公表した「DX動向2026」では、DXに取り組んでいる企業が75.7%でした。4社に3社です。

ただ、この数字をそのまま世の中全体の姿と受け取るのは早いです。

調査の対象は企業の経営層かICT関連部門で、有効回答は1,799社。回答の2割が従業員1,001人以上の会社です。規模で切ると、1,001人以上は98.7%、100人以下は41.6%。同じ調査の中で57ポイントも開いています。中小機構の調査(有効回答1,000社)だと、取り組み中と検討中を合わせて39.1%、取り組む予定なしが31.5%でした。「取り組んでいる」の聞き方が両調査で少し違うので単純には比べられませんが、実感に近いのはこちらでしょうか。

大きな会社ではほぼ全員が何かしらやっていて、100人以下では半分に届かない。

二極化、というやつです。

100人以下の会社が取り組まない理由の1位は「メリットがわからない」で、54.0%。「お金がない」より先に「意味が分からない」が来ているのが、私には印象的でした。

成果はコスト削減に偏っている

DXで成果が出ている企業が挙げた成果の内容の横棒グラフ。コスト削減70.9%、従業員満足度の向上42.4%、利益の増加19.6%、売上の増加17.9%(IPA DX動向2026をもとに作成)

成果が出ていると答えた企業は60.8%。

IPAの調査でこの数字は4年横ばいで、「わからない」が26.8%あります。

では、成果が出ていると答えた企業は、何の成果が出ているのでしょうか。

成果の内容割合
コスト削減70.9%
従業員満足度の向上42.4%
利益の増加19.6%
売上の増加17.9%

コスト削減が7割、売上増は2割弱……。

効率化はできているけれど、商売そのものはまだ大きく変わっていない、という読み方になります。

先ほどの3段階に戻ると、これはデジタライゼーションまでの成果です。

ここで私が一番気になったのは、成果を測る指標を設定している企業が23.9%しかなかったことです。物差しを持っていない会社が4社に3社ある以上、「わからない」と答えた中にも相当数いるのではないでしょうか。

何を変えたいのかと、それをどの数字で見るのかを先に決める。地味ですが、これがあるかないかで1年後の景色がまるで違ってくるかと思います。

生成AIで何が変わったのか

総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)によると、生成AIを何らかの業務で使っている企業は86.4%でした(活用方針が「わからない」と答えた企業を除いた数字です)。前の年の参考値は55.2%なので、1年で31ポイント増えています。

同じ白書で、生成AIに組織的な取り組みがない企業は27.0%。アメリカ1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%と並べると、日本だけ飛び抜けて高い。個人としての利用経験も58.8%(前年26.7%)まで上がっているので、使う人は増えているのに、会社として形になっていないところが多いのだろう、と私は読みました。

IPAの調査では、生成AIの導入率が22.6%から44.0%へ、1年でほぼ倍になりました。導入している企業に用途を聞くと、上位は要約・翻訳・校正が82.5%、文書作成が80.5%、情報検索が77.0%。一方で自社製品の高度化は10.9%、生産や物流の計画支援は6.0%でした。

効果があったと答えた企業のうち、業務効率化を挙げたのは91.6%。

売上・利益の向上は3.9%、顧客拡大は2.7%です。

DXの成果と、そっくり同じ形ですよね。

中小機構のAI調査(2026年3月)でも、AIを導入済みの会社は20.4%、導入目的の1位は業務効率化・作業時間短縮で87.0%でした。

生成AIは「仕事を速くする道具」としては一気に広まった一方、「事業を変える道具」として使えている会社はまだ少ない。これが2026年秋の時点で、数字から見える姿です。

道具は変わっても、順番は変わっていないということかもしれません。

「2025年の崖」はどうなったのか

DXの話になると必ず出てくるのが「2025年の崖」です。

2018年に経済産業省が出したDXレポートの中で、古い基幹システムを放置した場合の経済損失を「最大で年間12兆円」と試算したことから広まりました。

今は2026年です。崖はどうなったのでしょうか。

私が確認できた範囲では、崖を越えたという総括も、損失額を測り直した発表も見つかりませんでした。経済産業省が2026年に新しいDXレポートを出した事実も、同じく見つかっていません。

いちばん新しい公式の総括は2025年5月に出た「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」です。古いシステムが残っている企業の割合を全産業で61%、大企業に限ると74%としています。中小企業より大企業のほうが高い、という向きです。IT人材の供給はベンダー側で需要の66%にとどまる、という数字も出ていました。経産省の概要資料は崖を「目前」と書いていますが、12兆円の再計算はしていません。

その後、2026年5月にIPAが新しい指標の案を公開して、意見を募っています。崖という言葉で急かす段階から、「何をどう測るか」を決め直す段階に移った、と私は受け取りました。ちなみにIPAの「DX動向2026」の本文には、「2025年の崖」という言葉が一度も出てきません。

年号が過ぎても、古いシステムは残る。

数字で見るとそれだけの話で、怖がる必要はないですが、放っておいていい理由にもなりません。

ホームページは何段階目なのか

中小機構の調査で、DXに取り組んでいるか検討中の391社に「何に取り組んでいるか」を聞いた結果(複数回答・主な項目を抜粋)に、私は少し驚きました。

取組内容割合
文書の電子化55.8%
ホームページの作成37.6%
会議・商談のオンライン化37.1%
クラウドの利用32.5%
テレワークの実施30.9%
セキュリティ対策強化29.4%
AIの活用28.4%
基幹システムの構築・導入26.6%
顧客データの一元管理26.3%

ホームページの作成が2位です。3位のオンライン化とは0.5ポイント差ですが、2位は2位です。

Web制作の仕事をしている身としては、正直くすぐったい数字でした。

ホームページを作ること自体は、上の3段階で言えばデジタイゼーションに近く、それだけでDXとは呼べません。ただ、最初に来る理由は分かります。会社の情報が外から見られる状態になって、問い合わせが届く入口ができる。ここで初めて「誰が、いつ、何を聞いてきたか」というデータが生まれます。顧客データの一元管理は26.3%で、ホームページの作成より11ポイント低い。入口はできたけれど、その先がまだ手つかずの会社が多いということでしょうか。

AIの活用は前年から14.1ポイント増えて28.4%。

クラウドの利用も32.5%で、こちらは月額で借りて使うサービス、いわゆるSaaSが中心かと思います。SaaSという言葉自体がよく分からない、という場合は、先に書いた記事があります。

道具は買わずに借りて使える時代になりました。

差がつくのは、道具を入れた後の流れのほうです。

自分の業種に置き換えてみると

工場・小売店・飲食店・事務所の4つの場面で、タブレットやレジなどの道具から出たデータがグラフにつながるアイソメトリックの図

3段階の表を眺めただけでは、自分がどこにいるのか案外ピンと来ないですよね。

たとえば製造業なら。図面をPDFにして共有フォルダに置き、日報をタブレットで入力する。ここまではデジタル化です。機械の稼働データを取って、どの工程で待ちが出ているかを数字で見て、段取りや受注の組み方そのものを変えたら、そこでDXと呼べる段階に入ります。

小売なら、在庫を表計算で管理するところから、レジの売れ行きで発注と品揃えが自動で動き、何が誰にいつ売れているかをもとに店の作りを変えるところまで。

飲食は分かりやすいです。券売機やタブレット注文を入れるのはデジタル化。注文データから仕込み量と人のシフトを決め、常連の来店間隔に合わせて案内を出すようになると、店の回し方が変わっています。

事務仕事の事務所、たとえば士業や制作会社は、いちばん止まりやすい業種かもしれません。見積書も請求書もクラウドで作り、打ち合わせはオンライン、契約は電子署名。全部デジタルなのに、案件の進み具合は担当者の頭の中にだけあって、誰がどこで詰まっているかは本人に聞かないと分からない。道具は揃っているのに、仕事の流れは紙の時代と同じ……という形です。

4つ並べて共通しているのは、境目が「道具を入れたか」ではなく「道具から出てくるデータで、やり方を変えたか」にあることです。私は、ここだけ覚えて帰ってもらえれば十分だと思っています。

やり方を変えるには、今のやり方がどうなっているかが先に分かっていないといけません。手順の最初が「流れを1本書き出す」なのは、そのためです。

小さく始めるならここから

自動で動く機械に青いランプとベルが付き、離れた人がスマホの通知で停止に気づく図

中小機構の調査で、DXの課題として「効果が見えない」を挙げた会社は21.4%、「何から始めてよいかわからない」は13.9%でした。取り組まない理由の1位も「効果が見えない」で、25.7%です。

効果が見えない、の手前に「見る物差しを決めていない」があるのではないか。

先ほどの23.9%の数字を見た後だと、私にはそう思えます。

私が自分の仕事でやってきて、これで間違っていなかったと思う進め方です。

小さく始める4つの手順
  1. 今の仕事の流れを1本だけ、紙に書き出す
  2. 人が手で繰り返している箇所を1つ選ぶ
  3. 変えた後に見る数字を1つ決める
  4. 止まったときに気づく手段を決める

4つ目を入れたのは、自分で痛い目を見たからです。

弊社では官公庁の入札公告を毎日自動で集めて、自社の資格や条件で点数をつけ、タスク管理ツールへ流す仕組みを自分たちで作って動かしています。今年の夏に完成して、毎日昼に勝手に動く。作る前は人が検索サイトを毎日手で見ていたので、これはかなり楽になりました!ところが稼働してすぐ、収集元のサイトのSSL証明書に不具合があって、約12日間、収集が止まっていたんです。止まっていることに、誰も気づきませんでした。

気づいてから、約1,000件分を取り直しました。自動化すると人が見なくなるので、止まったときに知らせてくれる仕組みがないと、動いていない期間がそのまま穴になります。

自動化した後は、「動かす」より「止まったら分かる」のほうが大事でした。

  • 変える前の流れを、誰かに口で説明できるか
  • 止まったときに、誰がどうやって気づくか
  • 効果を見る数字を、1つ決めたか

ホームページが古いままで、問い合わせの入口そのものが機能していないなら、まずはそこからです。

補助金は締切を確かめてから

中小機構の調査で、DXに期待する支援の1位は補助金で、43.9%でした。気になるところですよね。

国の制度では、旧IT導入補助金にあたる「デジタル化・AI導入補助金2026」が、2026年11月の時点で受付中です。通常枠・インボイス枠・セキュリティ枠の次回締切は2026年12月1日17時。複数者連携枠は2027年1月7日17時が最終締切になっています。通常枠は補助率が2分の1以内(最低賃金の要件を満たすと3分の2以内)で、補助額は1プロセス以上で5万円から150万円未満、4プロセス以上で150万円から450万円以下。クラウドの利用料は最大2年分が対象です。

ひとつ、はっきり書いておきます。

この補助金は登録されたITツールの導入が対象で、ホームページ制作そのものは対象外です。「ホームページを補助金で作れますか」という問いへの答えは、この制度に関しては「いいえ」になります。

岡山県の「デジタル化による生産性向上等支援補助金」と岡山市の「DX推進事業補助金」は、どちらも今年度分の受付が終わっています。自治体の補助金は年度ごとに公募時期も条件も動くので、申請を考えるときは必ず公式サイトで最新の公募を確認してください。

補助金ありきで道具を選ぶと、使わない道具が増えがちです。

先に「何を変えたいか」があって、それに合う制度があれば使う。順番はこちらです。

DXという言葉を使わなくても、「問い合わせが来た後の流れをどうしたらいいか」「古いホームページのどこから手をつけるか」くらいの相談はお問い合わせから受けています。ただ、今の仕組みで十分です、という答えになることも多いはずで、そのときはそう言います。

本当のところ、調べる前は「DXは大きい会社の話」だと思っていました。数字を見た後の感想は少し違って、大きい会社も効率化で止まっているし、小さい会社はそもそも入口で迷っている。

やることは規模によらず同じで、流れを1本書き出して、数字を1つ決める。弊社も、まずは自分たちの仕事を3段階の表に当てはめるところからです。

参考・出典

Written by

グレープフルーツ編集部です。
ウェブ制作やマーケティングに関する最新情報、事例紹介、役立つノウハウをお届けしています。

目次